厚木基地で隊員の厚生支援を行うショップ「厚木PXさんきち」。

綾瀬市と大和市をまたぐ場所にある”厚木基地”。綾瀬でも大和でもなく、”厚木”基地と呼ばれる理由は諸説あるようです。基地内の土地はまだアメリカの土地であり日本へ返還されていません。基地内に一歩足を踏み入れれは、そこは日本と別世界。そんな基地内で自衛隊員の厚生支援をされている「厚木PXさんきち」さんへ、今回はお話を聞くことができました。店内にはオリジナルグッズが盛りだくさん。お店のことについて、いろいろインタビューさせてもらいました。

厚木PXさんきち / 株式会社燦吉 代表取締役
山崎 一男 Kunio Yamazaki

1982年自衛隊に入隊。2013年陸上自衛隊を定年退官し、2015年株式会社燦吉を設立。2017年厚木基地内にPXさんきち開店。

厚木PXさんきち / 株式会社燦吉 広報班長
菊池 璃央 Rio Kikuchi

2012年陸上自衛隊へ入隊し訓練を受け野戦特科(郡山駐屯地)へ配属。7年間陸上自衛隊に身を置いた後、2019年民間企業へ転職。2022年、自衛隊に関わる仕事を求めて株式会社燦吉へ入社。厚木PXさんきち広報担当。

隊員の身の回りのケアと厚木PXさんきちのオリジナルグッズについて。

——まずはじめに、お店について簡単にご紹介いただけますか。

山崎さん:こちらのお店は防衛省共済組合の委託売店になります。自衛隊のグッズを作って販売したり、海上自衛隊の隊員さんのネーム作りや階級章の縫い付け、そういった身の回りの制服関係のお仕事が中心です。自衛官の皆さんが使う靴磨きの靴墨など、そういった身の回りのものもお店で販売しています。

——厚木基地の隊員さんの身の回りのことをされているんですね。

山崎さん:仕事の中心はそうですね、厚生センターとして隊員さんが安らげる場所になっています。

——厚生活動もされる中でグッズの販売もされていて、オンラインショップも開かれていますよね。

山崎さん:そうですね。お客様のほとんどは米軍の方と海上自衛隊の隊員さんなんですけど、基地に入られない方もグッズを購入できるようにインターネット販売もやっています。

——基地まで来なくてもグッズを購入できるのはありがたいですね。店舗で働かれているみなさんは自衛隊関係の方なんですか?

山崎さん:みんなという訳ではないですが私は自衛隊のOBなんです。ただ、海上自衛隊ではなく陸上自衛隊でした。自衛隊にいたのがプラスになる部分もありますし、この環境が親しみやすいですね。彼女も同じく自衛隊にいて、その経験を生かせているんじゃないかなって思います。

菊池さん:私も元々は陸上自衛隊に入隊してました。7年間陸上自衛隊に籍を置いていて、一度民間の企業に移ったんですけど、自衛隊の雰囲気が好きで戻ってきました。

——自衛隊というキャリアがないとお店で働けないんですか?

山崎さん:全然そんなことないですよ。”厚木PXさんきち”のPXは自衛隊基地の中の売店のことなんですけど、私のようにOBでこうやってPXをやってる方は逆に少ないと思いますね。PXではなく外でグッズを販売されている人は結構いると思います。PXで自衛隊出身って人は実はあんまり少ないんです。

——PXは基地内に必ずあるものなんですか?

山崎さん:そうですね、厚生センターはどこの基地にも必ずあります。陸上自衛隊でも海上自衛隊でも航空自衛隊でも、隊員さんが床屋さんに行ったりクリーニング屋さんに行ったり、外に出なくてもある程度基地内で済ますことができる環境は作っておかないといけないので。

——当たり前ですけど、基地内で生活できる環境が必要なんですね。お店は山崎さんお一人で設立されたんですか?

山崎さん:刺繍をやってる方と裁縫をやっている方の3人で始めました。当初はまだお店もこれほど大きくなくて、3分の1ほどしかなかったんですよ。だんだん物が増えて次第にお店が大きくなって今のサイズになりました。米軍さんがお土産に欲しいものを置かしてもらってるので、たくさんの方に来てもらえるようになって、それもお店が大きくなったきっかけなんですよね。

 

 

SNSのつながりからオリジナルグッズへ。戦闘機ファントムの擬人化キャラクター「ファントムおじいちゃん」。

——”ファントムおじいちゃん”や”ブルーインパルスくん”などのかわいいネーミングの商品がたくさん置いてありますよね。

山崎さん:これは”にしにしさん”ってTwitterで知り合った方が作ったキャラクターなんです。ファントムおじいちゃんは戦闘機ファントムを擬人化したキャラクターで、4コマ漫画でTwitter に載っていたんです。それが面白くて見ていたんですけど、そこから繋がりが持てるようになっていきました。

——にしにしさんと繋がったことでファントムおじいちゃんグッズが生まれたんですね。

山崎さん:にしにしさんはご自身でグッズを作られているわけではなかったので、うちで代わって作らせてもらった感じですね。アドバイスや監修をしてもらいながらグッズになっています。ちょうどファントムがブームになった時期だったんですよ。2年ぐらい前かな、あと1年、2年としたらなくなるっていうので全国をファントムが飛び回って引退するって。その時期と上手く合ったのかもしれないですね。

——こちらの本は?

山崎さん:新紀元社さんがにしにしさんに取材して作られたファントムおじいちゃんの本です。さんきちを紹介してくれているページもあるんですよ。イーグル兄さんやライトニングくんなんかのファントム以外の戦闘機もキャラクターになってます。

菊池さん:私も戦闘機にあまり詳しくなかったんですけど、この本を読んで覚えました。

 

 

——オーダーメイドのグッズについて詳しく聞かせてもらえますか。

山崎さん:うちの魅力はたぶんそこなんですよね。大量に製品を作るんじゃなくて、1人1人のお名前を刺繍して作るとか、そういった他の大きい会社ではできないことをやるのがうちの魅力だと思っています。隊員さんの制服を扱っているので、どこに何を付ければいいか知識が活用できるんです。街で売っているジャンパーに隊員さんの着ている制服と同じ仕様で付けたり、そういうことができます。

——位置や付け方にも厳密にきまりがあるんですか?

山崎さん:階級章の場所や位置などの付け方は全部決まってますね。間隔も何ミリ空けるとか、階級章もいろいろありますので大きさがそれぞれ違うんです。一つ一つ付ける場所にも意味があって、規則通りに取り付けすることが大事なんです。それをしっかりと基準通りに縫い付けることがうちの仕事なのかなって思いますね。

——確かにそれはさんきちさんだからできることですね。ワッペンやネームタグのグッズもすごい数がお店にありますけど、あれらも全て手作りなんですか?

山崎さん:すべてではないですね、1割2割ぐらいでしょうか。ただネームタグは大体オリジナルです。ネームの縫いつけからうちは始めたもので、お店の基本になっています。種類が多いのは米軍、航空自衛隊、海上自衛隊、陸上自衛隊を取り扱っているからですね。新しいミシンを導入する予定なので、ワッペンもお店のオリジナルのもを作っていきたい願望はあります。それに向かってみんなで努力していかないとなって。

 

 

自衛隊のいろいろについて。

——あまり縁がない世界なので聞きたいのですが、陸上・海上・航空自衛隊とそれぞれで派閥みたいなものってあるんですか (笑) ?

山崎さん:派閥はないですね (笑) 陸上自衛隊の中でもいろんな職種があるんです、全員が同じことをやっているわけじゃありません。所属したところの仕事は完璧にわかるんだけど、他の職種のことは一切知らなかったりします。そこのプロフェッショナルになるためにみんな努力しているので派閥みたいなものは一切ないですね。

菊池さん:私は通信職種に配属されたので、ずっと通信関係の仕事をしていました。

——まったく知りませんでした。それは入隊されてから職種の希望を出したりするんですか?

菊池さん:最初は全員職種関係なく同じ訓練を受けて、その後適正で配属されます。

山崎さん:適正というのは入隊時にやる試験のような検査で、あなたはこういう仕事に向いてますみたいな感じで決まっちゃうんです。

菊池さん:私も落ち着いた職種に行きたかったんですけど性格が戦闘職種に向いているって、戦闘職種の野戦特科に配属されました。自分はほんとに戦闘職種に向いているのかなって (笑) 。

——1個ずつステップを踏んでいくものだと思っていたんですけどそうではないんですね。山崎さんはどういった職種だったんですか?

山崎さん:陸上自衛隊の普通科という職種でした。普通科と聞くとすごい普通なことやってるのかなって思ったら、昔で言う歩兵の務めなんです。だから、最前線に出る役割ですね。装備もあんまりなくて、戦車とかいろんなところと共同で戦うんです。

——普通科って名前とはかけ離れていますね (笑) 。実際に戦地へ行くことなんかもあったんですか?

山崎さん:私がいる時代は戦争が起こっていないので行ってないですよ。戦争には行きませんでしたけど、災害派遣は16回ぐらい行きましたね。2年に1回のペースぐらいでは行っていました。東日本大震災などいろんな被災がありましたけど、やっぱり地震や津波のひどさは一番印象に残っています。

——そうだったんですね……。最後に、今さらながらさんきちさんの名前の由来を教えてください。

山崎さん:ラッキーキーワードを組み合わせたんです。燦々と輝く「燦」と、大吉中吉の「吉」を合わせて「燦吉(さんきち)」。おめでたいラッキーワードです。

 

ー基地内を案内してもらいました!ー

 

——これは実際に戦闘機として使われていたんですよね?

菊池さん:そうです、実際に使われていたもので、現在は運用が終了し展示用になりました。ここ厚木とアメリカにもあり、日本にはこの1機だけだそうです。これは映画のトップガンでもマーベリックが乗っていた戦闘機です。 トップガンのファンの人が写真撮影に来ているのも見たことがあります。機体に書かれているNAVYというのは「海軍」の意味で、日本の海上自衛隊ではなくアメリカの海軍のことを指しています。星のマークはアメリカの海軍のマークです。

——撮影は自由にできるんですね。

菊池さん:展示されてるものは民間の方でも撮影できます。基地のお祭りの時には一般の方も基地に入ることができるので、その時に撮影できます。

 

 

——こちらの機体は?

菊池さん:こちらは要人輸送用のヘリです。こんなに大きいんですけど2,3人しか乗らないんですよ。”DANGER”の上に書いてある”UH -3H”がこのヘリの名前で、調べるとどんな機体だったのか出てきます。

ー取材のご協力ありがとうございました!ー

 

厚木PXさんきち

住所:神奈川県綾瀬市無番地 海上自衛隊厚木航空基地内 厚木PXさんきち
TEL:090-3364-83081
営業時間:10:00~18:00
定休日:土・日・祝日
オンラインショップ:https://www.san-kichi.jp/
Twitter:https://twitter.com/atsugi_sankichi?ref_src=twsrc%5Egoogle%7Ctwcamp%5Eserp%7Ctwgr%5Eauthor
Instagram:https://www.instagram.com/atsugipxsankichi/

※グッズをお買い求めの方はオンラインショップで購入できます。

あわせて読みたい記事

気付いたら一家でカイロプラクターに。患者さんの意識も身体も健康に変えていく「セルフクリエイト カイロプラクティック」。

2023年12月1日

厚木基地で隊員の厚生支援を行うショップ「厚木PXさんきち」。

2022年9月20日

“誰もが活躍できる社会”の実現を目指す「神奈川中央障害年金センター(フェリタス社会保険労務士法人)」。

2022年12月23日

足を踏み入れるだけで心がワクワクする、家具雑貨店「ILLGATE」。

2022年5月27日

豊かな自然と、美味しいパンと。森の中に佇むパン屋「NoPell」。

2022年6月20日

創業200余年、七沢の地で美酒を造る「黄金井酒造」。

2022年9月28日

Follow us