明治に創業し、その長年培ってきた知識やお客様の声からのアイディアとご縁を大切に「有限会社中山石材店」。

大切な人は私たちの中で生き続けるもの。私たちは故人や家族であるペットを日々、何気ないところで想うことがあると思います。「心」を大切に、お客様に寄り添い、その縁を大切にしていく。今回は、厚木市七沢にある有限会社中山石材店の中山さんに、故人やペットへの想いを形にできる手元供養「縁(えん)」についてお話をお伺いました。

有限会社中山石材店 代表取締役
中山 常夫 Tsuneo Nakayama

厚木市出身。有限会社中山石材店の代表取締役。中学生の夏休みから家業の手伝いをはじめ、そこから東京ビジネススクールの経営学科で経営学を学び、卒業した20歳から石材の世界へ。日々、納骨に立ち会う石材店としての視点からお客様に寄り添ったサービスを展開中。

厚木から「手元供養」を広めていく、その心とは?

——明治に創業し、様々なことを歴代取り組まれていたと思います。その中で「手元供養の縁(えん)」を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

中山さん:手元供養のきっかけは、10年前ぐらいになると思います。お世話になっている寺院で、今はもう当たり前になってきていることではあると思うのですが、その寺院では合同墓が作られています。亡くなった人たちお遺骨を1つ1つ壺として預けるのではなく、散骨を行うような合同墓です。 当時、それを知った時は画期的だと思ったのですが「え、こんなことやっちゃうの?」と疑問に残るところでして。

——お遺骨をお墓に納めるイメージがオーソドックスではありますよね。

中山さん:そうですね。合同墓は壺を1つ1つ納めている所は以前からありましたが、その寺院はお遺骨を全て撒いてしまう所でした。なので、誰が誰のお遺骨かもわからない。そんなようなことがあって、散骨した方が後に「少しだけでもお遺骨を残しておけば良かった」などの後悔が残ってしまわないか。今まで長年ともに過ごしてきた方が亡くなった方への感謝の気持ち、「お疲れ様」や「ありがとう」などの気持ちを込めてお遺骨を納めていただくことが本質だと個人的にはそう思います。身寄りがない人が散骨を希望し、そのようにするのは仕方ないと思いますが、身寄り(ご家族)がいるのに関わらず散骨をしてしまうことが、すごく自分の仕事の中で悲しく思えてしまって、こういう時代が来てしまったのか…という思いがありました。それと、少しでも石屋としてお客様に何かできないだろうかと考え始めました。

それから考えていたある時、知り合いの方から「お遺骨を使ってお家に置いておけるようなものって作れないの?」というご意見いただきました。ご意見をもらってから「どんなものが良いだろう?」という試行錯誤に入りました。このご意見が一番のヒントになり「手元供養」というものにフォーカスし、インターネットなどで調べるようになりました。実際にどういうものがあるのか、調べてみてやはり類似品はちょっと嫌だなという感覚がありました。

そんな時に、たまたま私の後輩に樹脂を扱う会社をやっている人物がいて、その方と会う機会がありました。「どういう仕事をしているのか」「何をしているの?」など他愛のない会話をしながら「今、実はこんなことを考えていて、こういうものをやりたいと思っている」という手元供養の話をしてみたところ、その後輩が「会社で扱っている“樹脂”を混ぜて形にできるかもしれないよ」と言ってくれて、そこから挑戦が始まりました。

——そうなんですね。お遺骨をモニュメントにしてからまた粉骨に戻す、という技術はすごいと思いました!

中山さん:“樹脂”を使って固めていることによって結局、また熱を加えることによって樹脂だけが溶けてなくなります。

——お遺骨も一緒に焼けてしまうのかなと思ってしまいました。

中山さん:既にご遺骨って焼いてあるものなので、骨は焼けませんね。けれど、色は若干ですが黒くなり、お遺骨だけが残るようになっています。この技術に関しては、特許を取得しました。

——特許を取られているのですね!すごいです。デザインが凄く工夫されていてなかなか制作も大変なのかなという印象を受けますが、どのようになさっているのですか?

中山さん:デザインは、元々自分自身が石材を形でやっているから、だからそういったものに関しては、全く無知な状態ではないですが、どういうものがお客様に親しんでいただけるのかわからない所もありました。ホームページの方にも記載していると思いますが、商品を発表するのにあたって東京工芸大学デザイン学科の生徒さんたちとの「産学共同プロジェクト」にてコラボレーションさせていただきました。

——東京工業大学の生徒さんとのコラボレーション、何かきっかけが?

中山さん:半年のカリキュラムを組ませていただいて、月に1回は中野坂上まで通っていてその中でディスカッションを行っています。

——なるほど、生徒さんとの交流機会の中でデザインが仕上がったということですか?

中山さん:はい。生徒たちとディスカッションしながら「こんなものを作りたい」というこということで出来上がったデザインが今の商品になっています。

 

——続いて、「手元供養」の商品についてお話を聞かせてください!手元供養の「縁(えん)」の他にもお守りの「想い」という商品なども展開されていますね。

中山さん:そうですね。その2つのほかにペット用の「華(はな)」という商品もあります。こちらはチャームになっていまして種類は、球体チャームとフラットチャームです。「縁(えん)」はモニュメントの他にもお守りのデザインやブレスレット用の丸玉などがあります。

 


昨年の9月、事務所の改築と新たにショールームを設けたそうです。ショールームにはたくさんの石材のオブジェや「縁(えん)」や「想い」の商品サンプルが並んでおり、実際に商品を手に取り拝見させていただきました。

——こちらはチャームですか?

中山さん:はい、お話させていただきました「想い」の商品で、フラットチャームと球体チャームです。チャームはカバンなどの持ち手のところへ付けることができます。

左側「ブレスレット用丸玉」・右側「球体チャーム」のサンプル ※球体チャームのブレスレットはご自身でご用意ください

 

中山さん:それとこちらはお守りの「華(はな)」です。この中にモニュメントを入れて、お守り自体をカバンなどに入れてもらって持ち歩いていただければと思います。

——ふと見た時、これがお遺骨だとわからないのが新鮮ですね。お遺骨や樹脂のほかに何か混ぜて固めているのですか?

中山さん:いえ、全部がお遺骨です。樹脂はあくまで形にする、固めて使用するためのつなぎのようなもので使用しています。置いてあるサンプルは、色の違いをはっきり見てもらった方が良いと思い、ショールームに置いています。色のトーンはお遺骨の状態によって決まりますので10人が10人全部同じものを作っても色の仕上がりが変わりますね。使用するお遺骨によって白い部分が沢山あるものやそうでないものあるため、本当に白くしたいというご希望だとそういう部分をお預かりして形にしていますが、すでにお遺骨は焼いてあるものですので、なかなか真っ白にすることは難しいです。

——モニュメントの見た目から重たそうに感じたのですが、手に持つと軽いですね!驚きました。

中山さん:お遺骨と樹脂だけなので軽いですよ。ただ、チャームのパーツやお入れするものによって重さを感じるかと思います。

手元供養の「縁(えん)」のサンプル品
仏像や如来、天使、お地蔵様などのバリエーションがございました。※一番右側のはペット用モニュメント「陽・月~暖かなひざし~」

 

左:ペット用モニュメント「温~ぬくもり~」
犬猫問わず、動物と魂をモチーフにしたデザインとなっていて、上部部分は魂が天へと上るイメージも想像できます。

右:ペット用モニュメント「安~やすらぎ~」
ペットがお家で丸くなって寝ているイメージをモチーフにデザインしたそうです。

 

——お遺骨の状態で色味の変化があるのも驚きです。「縁(えん)」では台座がありますがこの台座は、東京工業大学の生徒さんたちとお話を?

中山さん:いえ、こちらは知り合いのガラス工房の方に依頼して形にしてもらっています。デザイン自体は弊社のデザイナーが行っています。

——そうなんですね!組み合わせが綺麗で感動しました。

中山さん:ありがとうございます。最初は、このガラス部分はアクリル板で進めていましたが、ガラスを見てからはガラスのクオリティに勝るものはないと思ってしまって…。

——やはり、ガラスとアクリルと違いがあるのですか?

中山さん:そうですね、アクリルだと何か物足りなさを感じてしまって。アクリルだけで見るとアクリルも確かに綺麗ですが、比べてしまうとやはりガラスの方が良かったですね。

——制作にはどのくらいのお時間を要していますか?

中山さん:既存の形でのご依頼がメインとなりますが、オーダーメイドも可能です。型がある既存のデザインだと大体1~2ヶ月で、オーダーメイド(フルオーダー)になると3ヶ月半くらいになります。オーダーメイドは型がない分、お時間をいただいてしまいますが、お客様ニーズに合わせて、こういう形を作りたいなどのご要望やご相談があれば、フルオーダーという形で承れます。

——お客様のニーズ的に、インターネットでご注文されるお客様は多いですか?

中山さん:インターネットは、比較的に少ないのが現状です。話が少し戻りますが、東京工芸大学の生徒さんと一緒に産学共同研究授業で一緒にコラボして作らしていただいた関係で、日経新聞や毎日新聞などのいくつかの新聞で取り上げられた際にそれをご覧になれたお客さんからお問い合わせいただきました。現在は、主に東京ビッグサイトのギフトショーなどでの出展が多いですし、展示会で出展や昨年は三越伊勢丹の百貨店への出展機会もありました。あとは、マルイなどでも出展機会をいただいています。そういう風にして1人でも多くの人に周知できればという形で活動しています。インターネットでの販売はしていますが、周知活動も難しいところがありますし、やはりどうしても亡くなった方のお遺骨をお預かりしなきゃいけないので、ネット決済などで簡単なやり取りをする訳にもいきません。お会いしてお話を伺う、お電話でのやり取りがないとトラブルになりかねないので、インターネット販売はなかなか難しい所ですね。

——確かに、そういう点を気にされる方もいらっしゃいますよね。ちなみに、納骨を済まされている場合ややっぱり手元に何か残したいという希望で来られる方もいらっしゃいますか?

中山さん:そうですね。ペットの場合は、ペット霊園にずっと預けてあるお遺骨を持ってきていただいて、お家に飾っておいときたいとご依頼のお客様もいらっしゃいます。なので、亡くなってからすぐに作らなきゃいけない訳でもないので、一度、霊園などに預けていた、納骨した後でも作ることは十分可能です。

——なるほど、ありがとうございます。「手元供養」や「縁(えん)」などがもっと知れ渡るようになると良いですね。特許も取られていて、唯一無二、オンリーワンなものだと感じました。

中山さん:皆さん同じ形であってもお客様にとっては違います。やはり世界に1つ、故人やペットは1人(匹)だけのものですから、本当にオンリーワンという形になると思います。

 

——最後になりますが、今後の目標はございますか?

中山さん:商品名の通り、どんどん「縁(えん)」を広げて、1人でも多くの人にこの商品を知っていただきたいです。ご興味のある方はぜひ、検討していだいて、購入して欲しいと思います。いずれ“手元供養”というものが、人もペットも多くなってきていますし、ブランド化ができたらと思いますね。まだそこまで辿り着けてはいませんが、気持ちとしてはそう思います。

 

明治に創業をし、長年の石材店としてのお仕事に加えて積極的に取り組む「手元供養」。
今を生きている私たちと大切な故人たちとを繋ぎ合わせてくれる機会だと感じ、お話を聞く中で「手元供養」は様々な形で残していけることに終始驚きました。
大切な家族を繋ぎ「縁」を大切していく中山さんの姿勢に感銘を受けた時間でした。ありがとうございました!

 

手元供養「縁 心をかたちに ~いつもあなたの側に寄りそって~」

受付時間:月~金 9:00~18:00(祝・祭日除く)
TEL:046-280-5548 ※受付はホームページでも承っています
手元供養「縁」HP:https://kokorowokatachini.com/
Instagram: https://www.instagram.com/en_kokorowokatachini/


有限会社中山石材店

住所:神奈川県厚木市七沢1419
営業時間:月~土 9:00~18:00
HP: https://www.nakayama-sekizai.co.jp/
Twitter:https://twitter.com/en_nakayama
Facebook:https://www.facebook.com/nakayamasekizaiten/

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