就業支援施設が織りなすフラワーアレンジメント「Studio R」。

就労継続支援は障害者総合支援法に基づく福祉サービスの一つです。一般企業で働くことが困難な利用者が働けるように支援をされています。就労継続支援にはA型、B型とあり、障害を持つおよそ7割の方は雇用契約を結ばない就業継続支援B型を利用して働かれているそうで、作業に対して得られる工賃は全国平均にして月16000円。とてもじゃありませんが、毎月のお給料がこの金額では生活もままなりません。厚木の就業継続支援B型事業所「Studio R」代表の高田さんへ、詳しくお話をお聞きしました。

TERASU株式会社 代表取締役 / Studio R
高田 昌慶 Masanori Takada

1987年生まれ、厚木市出身。2011年震災後に日本政策学校に入学。元農水大臣の山田正彦炉端政治塾事務局長として従事。Studio Rの運営母体であるTERASU株式会社代表取締役。就労継続支援の他に相談支援・放課後等デイサービス・共同生活支援を市内で展開をしている。

得意を価値にかえて、お花を届けていく。

-本日はよろしくお願い致します! まず初めに、就労継続支援や事業について教えていただけますか。

高田さん:よろしくお願いします。就労継続支援はA型とB型に分かれているのですが、B型利用者の工賃は全国的に平均16000円と言われているんです。工賃というのは、1ヶ月のお給料のことですね。16000円で自立できるのかと言われればもちろんできません。その課題をどうにか解決したいということで、我々はこの「Studio R」を始めたんです。そもそも我々、厚木市内で障害のある子どもたちの支援施設を3箇所ほど運営していまして、その施設の子供たちが将来的に大きくなった時に働く場所を作らないと無責任だよねというところで始めたのも理由の一つです。

-なるほど。

高田さん:事業内容としましては、お花のアレンジメントをして、事務所やホテル、そういった場所にお花を届けています。プロのフラワーデザイナーの先生と一緒にお花を生けて納品をするんです。品質に関してもお花屋さんと同じ様な良いモノだけを取り扱っています。厚木に「花き」という大きな市場があるのご存知ですか?

―市場ですか?

高田さん:厚木市にお花の流通のハブとなっている大きな市場があるんです。そこで契約をして直接取引しているので、モノとすると町のお花屋さんで取り扱っているものと同じです。お花屋さんもその市場で買われていることがほとんどなので。ただそうなると、後はそこにどうやってプラスアルファの価値を乗せるかということになりますが……週1回定期でお届けをしてますので、利用者とお客様でコミュニケーションが取れるんです。「今週はこんなお花をアレジメントしました」「こういった想いで作りました」「手紙を書いてみました」、毎回顔を合わせる中で伝えていけることがありますし、利用者にはひとり一人色々な得意があって、例えばブローチを作るのが好きな人もいますし、凝ったデザインを作れる人もいますし、そういった特性もプラスアルファしてお届けしています。

―普通のお花屋さんとはまた違うんですね。

高田さん:ただ、我々は全国平均16000円という工賃を上げたい、10倍にしたいという想いを持ってこの取り組みをしているんです。なので、材料費を抜いた残りの金額を全て利用者に還元しています。良いものを作って良い状態でお客様に届け、喜んで頂く。この取り組みが広がっていくことによって、もしかしたらいずれ16000円が16万円になるかもしれないなって。

就労支援に取り組んでいく理由。理念を持って、課題を解決していく。

―利用者の方の工賃を上げていきたいという想いでやられているんですね。

高田さん:大切にしていることがありまして、多分障害分野の事ってあまり皆さんには知られていないと思うのですが、今の現状は”船乗りにケーキを作れ”と言っているようなものなんです。全然違う分野の仕事を無理やり当て込んで仕事をさせているような感じですね。でも本来、利用者によって特性は全然違う。”あなたができること好きなものを持って、それに従って社会参加をする”、これは多分綺麗事なんですけど必要なんです。だから、その場所を作っていこうと「Studio R」を立ち上げました。「Studio R」の「R」はレボリューションなんです。ここ「Studio R」の就労継続支援B型事業所、障害を持った子どもたちを支援する施設、相談支援事業所とグループホーム、それが全部くるまって、内包して一つのサービスとして、親亡き後もしっかりケアするところを大切にして取り組んでいます。

―事業全体でケアをなされているんですね。高田さんが就労支援を始められようとしたきっかけって?

高田さん:さっきお話した児童の支援施設は10年程前から行っていまして、その中で出会った子ども達に思うことがありました。施設に通う児童は児童福祉法というところで定められている年齢があるんです。高校を卒業するとそのサービスが使えなくなってしまい、社会参加、就労しなくてはいけなくなります。でも、就労しなくてはならないのに、世の中を見たら大体障害を持った7割の人はB型に割り当てられてしまいます。就労継続支援A型とB型、一般企業への就労に分けられ、A型は軽度の方ですね。何年間も支援を続けてきた子がいろんな学校の職場体験へ行き、厚木市内・海老名・平塚と、あなたはこういったところが合うんじゃないと紹介をされるんですけど、結局はB型とされてしまう。でも、その子達は何でもできるんですよ。政治経済、タレントの話からアニメや趣味の話、多岐に渡って本当に才能豊かな子が、毎日毎日働いたとしても月に16000円しか稼げない現実がある。これではその子の中で自己肯定感が低くなってしまいます。どれだけ一生懸命働いたとしてもそれしか稼げない。そしたらその子が「世の中に必要されてない人間なんだ」って話をしたんです。でも、それってその子が悪いのではなくて、どちらかと言えば社会の問題であって、我々やその社会の側がシステムを提供できてないことが原因だなって。さっき話しをした通り”船乗り無理やりケーキを作らせてるようなもの”じゃないですか。だから、しっかりとした場所を提供しなくちゃいけないと、就労支援の取り組みを始めました。

―「Studio R」を立ち上げられてからどれぐらい経たれたんですか?

高田さん:まだ実は短くて、1年半ほどですね。

―利用者さんは増えていらっしゃいますか?

高田さん:そうですね、おかげさまで増えています。ここが一つのベースとなってお給料を稼ぐための取り組みをしているんですけど、お弁当販売やったり、代理オークション出品をしたりもしています。あとは、施設外就労と一般的に言うのですが、うちの支援員が利用者に連れ添って、厚木市内にある例えば工場などの作業する場所に行って、利用者の特性をスタッフが説明したり、同伴しながら仕事をしたりします。施設外就労は最低時給以上もらうことができますし、利用者が就労継続支援B型から一般就労へステップアップした時のきっかけにもなるんです。だから、例えばお花のアレジメントを希望して入ってきたけれども、生活の安定のためにゆくゆくは自立していく時に、自立するためには仕事が必要なので、それに合わせて我々がいろんな方向性や選択肢を提供して支援をしています。

―企業様との相互理解がうまくいかなかったりすることもあるんでしょうか。

高田さん:やはり社会参加に難があってここに来てる方が多いので、本人の意向や意思も一つあるんですけれども、企業様が求めている体力と我々が思う所とスタートがなかなか合わなかったり、企業様からすれば仕事で来ているんだから当たり前だろうと思われることもありますね……。確かにそうだよなと思いつつも、それでも参加という機会を我々がどうやって提供できるかということを考えると、なかなか難しかったりもしますよね。

―高田さん自身は社会に貢献をしたいという気持ちが大きいんですね。

高田さん:と言うよりも、そもそもビジネスは社会に対して価値を与えるものじゃないですか。その対価としていろんなモノがあるわけで、社会課題の解決をしいくことを目指さないような会社ってのはあまりないと思うんです。だから我々もその意味においてはただのビジネスをやっているんです、言葉がきついですけどね。施設ごとにミッションがあって、児童の施設だったら児童施設のミッションがあって、グループホームはグループホームのミッションがあって、それぞれが一つになって取り組んでいます。TERASUの理念は”社会を照らす創造者となれ”なんです。だから、社会の課題や地域の課題を見つけたら、それに対して前向きに前進して捉えて、その困難を楽しむような創造者となる。工賃が低いというのも一つの課題じゃないですか。障害を持つ方がどちらかと言えば孤立化してしまうのは問題だと思いますし、そういったところを地域の人たちと協働して解決していく。お花を届けるのも地域に届けるわけですから、例えば飲食店にお花を持って行くと、そこで一つのきっかけができて、休みの日にランチを食べたり、それをきっかけに仲間ができたり、全て一つの社会参加になると思いますので。

ーこれから新しく何か取り組まれようとしてることはありますか?

高田さん:地域と協働というところで、もっともっと深い意味で繋がっていかなくちゃいけないと思っています。SNSを活用した情報発信にも力を入れていますので、地域の飲食店さんに取材をさせてもらってマイノリティな視点から魅力を発信していきたいなと。「Link」さんとは被らないようにしますので (笑) 。地域の共存という関係を将来的には作っていきたいです。

ー情報の発信楽しみにしています! 取材のご協力、ありがとうございました!

Studio Rさんでは、定期便でお花を届けるサービスだけではなく、アレジメントした素敵なお花を事業者で購入することもできます。空間の彩りにも、贈り物にもぴったりのお花です。

 

就労継続支援B型事業所
Studio R

住所:神奈川県厚木市旭町5-42-23 熊崎ビル1F
電話:046-229-3307
見学申し込み:9:00~17:00
ホームページ:https://studiorterasu.wixsite.com/studior-type-b
Instagram:https://www.instagram.com/studio_r51/

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