地元で60年間愛されている老舗和菓子店「幸月堂」。

今年もあっという間に4月が過ぎ、2022年も5月を迎えます。5月と言えば、男の子の成長を願う「端午の節句」が行事にありますね。今では「こどもの日」の方が馴染み深いかもしれません。そんな年中行事を華やかに彩り、お祝いの席を飾ってくれる素敵な和菓子の数々。今回は厚木市愛甲東にある老舗和菓子店「幸月堂」さんにお邪魔させていただき、店主の浅井さんに色々なお話を伺いました。

店主
浅井 幸一 Kouichi Asai

厚木市出身。東京製菓学校を卒業後、小田原市の老舗和菓子屋に3年間勤めた後、実家の和菓子司を継ぐ。”和菓子で人を笑顔に”をモットーに30年間御菓子作りに励む。

 

和菓子職人への道は何の疑いもなかった。

まずは創業について教えてください。創業はいつ頃ですか?

浅井さん:昭和36年の6月です。60年間ずっとこの場所で変わらずやっています。うちの両親が始めたお店で、私は22歳から働き始めているので、私自身もお店に立って30年近く経ちますね。

お店を継ぐことはずっと決められてたんですか?

浅井さん:なんか、そうみたいですね (笑) 。何の違和感もなく入ってきました。私姉が3人いるんですけど、初めは一番上の姉が継ぐと言っていたらしいんです。ただ、うちの両親は息子に継がせると言っていたらしく、何の疑いもなくお店を継ぎました。同級生とかにも「サラリーマンは向いてないよ」ってよく言われてましたね。

そうだったんですね。他に何かやりたかったことはあったんですか?

浅井さん:着物の職人とか・・・かな? 和のモノの職人になってたと思います。

ものづくりが好きだったんですね。

浅井さん:ものづくりが好きというよりも、周りが言うようにサラリーマンには向いてないんだろうなって。でも、他にこういう仕事がやりたいっていうのは考えたことなかったかな。一時、着物は良いなって思ったんだけど。やる人が少ないような、あんまりこれやる人いないだろうっていうのが良いなって思ってたかな。

―伝統的なものが好きだったんですね。専門学校は和菓子を学べる学校だったんですか?

浅井さん:そうです、高田馬場の東京製菓学校に通ってました。和菓子と洋菓子とパンを学べる課があって。高田馬場駅で降りるので、降りたら早稲田生だぞって感じで闊歩してましたね(笑)

 

 

お店に立って30年。美味しい和菓子を作るための日々の苦労。

―専門学校を卒業してから、ずっとお店に立たれているんですか?

浅井さん:専門学校に小田原の和菓子屋さんから求人が来ていたので、通いやすさもあってそこで働くことに決めましてね。

―そうだったんですね。修行のような感じですか?

浅井さん:そうですね、まあ修行ということになりますね。和菓子って、一番初めはあんこ練りから入るんですよ。あん練り3年、あん練り5年なんて業界では言うんですけど。私はあん練り3年経った頃に父から、うちに来ないかって話があって。今考えると、その時の父は丁度今の私ぐらいの年齢で、腱鞘炎もひどくて、私が継ぐことにはなって弱気になってたこともあって・・・。学校の先生からは「2,3件回ってからの方がいいぞ」って言われてたので、ホントはもう少し他所で修行するつもりだったんですけどね。

―そんな経緯があったんですね。お店に立たれて、やっぱり初めは苦労されました?

浅井さん:最初は大変でしたよ。専門学校を卒業して、3年ぐらいでお店に立ってましたから。自分の作ったものなんかで、お客様からお金をもらっちゃっていいのかなって想いがありましたね。

―和菓子をひとつひとつ手作りされてると思うんですけど、どれくらいお時間がかかるものなんですか?

浅井さん:ひとつだけ作るのであれば、そんなに時間はかかりませんけど、和菓子はあんこから始まりますから。あんこ練りからはじまり、煮て冷ましてで3日ぐらい。1回で50個とかを3~4時間かけて作ります。お店番もしないといけないし、そうするともっと時間もかかるし。

―すごい大変そうです・・・。お休みとかあるんですか?

浅井さん:お休みはほどんどないですよ!第3水曜日のみお店がお休みです。ホントは年齢的にも少しずつ増やしていかないとって思ってるんですけど、腱鞘炎もだんだんひどくなってきててね・・・。体力的なものも、もう55なので落ちてくるじゃないですか。これから体力が上がっていくことはないので、少し休ませなきゃなって。そう言っている矢先にお仕事の依頼が来て、ことのほか大変だったりとかね。朝もすごい早く起きるようになっちゃって。

―何時に起きてるんですか?

浅井さん:2時半です。

―えーーーー!!!そうなんですか・・・ご就寝は?

浅井さん:寝るのは21時半頃かな。家では主婦もやっているので、朝は洗濯もなにもできないから夜やって、ご飯作って片付けて。掃除とかもやったり、汚いですけどね、四角い部屋を丸く掃くような男なので (笑) そんなことをやってると寝るのが21時半とか22時頃ですね。

―そうとうきついですよね・・・。

浅井さん:最近は少しお店も落ち着いてきたので、商売だから落ち着いちゃいけないんですけど。

 

 

創業当時から変わらない、彩り豊かな和菓子。

―季節の商品は毎年考えて作られてるんですか?

浅井さん:定番のものは昔から時期によっていろいろありますね。この時期はこう、この時期はこうって。季節感もあるので、それは大切にしていかないといけないですね。夏になったら水ようかんだとかね。

―和菓子のひとつひとつがとてもかわいいですよね。和菓子を作る時はやっぱり試行錯誤されるんですか?

浅井さん:私はまず食べてみます。なんとなく味の想像はできますけど、あんこと合わせた方がいいかな、どうかなって。私がやるとこのぐらいでいいかなって妥協も入っちゃうので、スタッフの皆さんの反応を見たりとかかな。

―全部おすすめだと思うんですけど、その中でも一押しの商品があれば教えてください。

浅井さん:うちは最中と栗っこなんですよ。でもやっぱり一番は最中ですね。愛甲亀最中といって神奈川の指定メーカーにもなっているんですよ。

―やっぱり一味違いますか?

浅井さん:これが違うっていわれるとなんだろうな・・・。腕? かな(笑) この前実家が和菓子屋だっていうドラマが放映されてて、そこの主人公が和菓子屋さんで。「おいしくなれおいしくなれ」ってやっててね。そういえば自分もやっているなって。気持ちが入っているかどうかは大事だと思いますね。最中だけではなくて、作るものは全部ね。私はもうとにかく和菓子を作ることしかできないので、モットーっていえばいいのかな、和菓子で人を笑顔にっていうのを心がけてやっています。やっぱり人っておいしいものを食べると笑顔になるので、美味しいものを作らなきゃって想いがありますね。

 

 

和菓子は人生にずっとついてくるものだから。

―改めて和菓子の魅力を教えてください。

浅井さん:やっぱり繊細なところかな。あとは、季節感があるところじゃないですかね。和菓子って人生の一生の中でずっとついてくるものなんですよ、寄り添っていくっていうのかな。生まれたらお赤飯、お食い初めにはこれみたいに。3歳になったら七五三があって、そこには和菓子が付くし、何かにつけてお祝いがあったり、不幸があればお饅頭を添えたり。そうやって人生の中で和菓子はついてくるんです。私なんかもそうですけど、外国からきた新しいものには飛びつくけど、日本の伝統的なものはめんどくさいからやらないって思うじゃないですか。それは何とかしなきゃなって、想いはあります。家を建てる時は建前というのがあるんだよ、日本は農作物が中心だから春には豊作のお祭りがあるんだよ、秋には豊作になったお礼のお祭りがあるんだよって。そういう、伝統行事じゃないですけど、大切にしたいですね。そこには必ず和菓子がついてきますので。

―深いです、勉強になります。最後に、今後の展望があれば聞かせてください。

浅井さん:やっぱり御菓子を今まで通り、今まで以上なのかな。ひとつひとつね、作っていきたい。私は作る事しかできないから、丁寧に作っていこうってそれだけですね。スタッフさんがよく、御菓子が人を連れてくるっていうんですけど、たしかにそうだなって。輪もできるしね。大切につくっていこうって、それしかないので。

ーお時間頂き、ありがとうございました!!

 

今回お邪魔させて頂いた幸月堂さんは、愛甲石田駅の改札を出てすぐお店があります。店内にはかわいらしい御菓子がたくさん並んでいて、どれも魅力的でした。店主の浅井さんもとても気さくで明るい方で、帰りに頂いた柏餅はほんのり甘くて食べやすく、いくつも食べられるような優しい味わいでした。

 

御菓子司 幸月堂

住所:神奈川県厚木市愛甲東1丁目1-6
TEL:046-228-1941
営業時間:08:15~18:00
定休日:第3水曜日
Instagram:https://www.instagram.com/okashitsukasa_kogetsudo/
オンラインショップ:https://www.okashi-kogetsudo.com/
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