美味しい家庭料理屋を夫婦で営む「さなえん家」。

モツ煮と鶏の唐揚げが人気の家庭料理屋『さなえん家』。お店はご夫婦で切り盛りされていて、おなか一杯美味しい家庭料理を味わえるんだそう。今回はおすすめのお料理やこだわり、オープンのきっかけをお聞きしてきました。

さなえん家
大谷 美博  Yoshihiro Ootani

1970年生まれ、厚木市荻野出身。トラックドライバーとして30年ほど勤務。2020年2月、家庭料理屋『さなえん家』をオープン。2021年4月よりトラックドライバーを退職しお店の切り盛りに専念。

 

飲食店を開くことが幼い頃からの夢だった。

——お店オープンのきっかけから教えてください。

大谷さん:私の夢というところで、飲食店をやりたい、お酒を提供する店をやりたいっていうのがずっとあって、さなえさんも料理がうまかったし、周りにもやってみればなんて言われて。「やってみれば」でできるもんじゃないけど、半年ぐらいかけてあちこちお店を探して、丁度ここの物件が居抜きで空いていたから、ここでお店を出しました。

——ずっと夢だんたんですね。お酒にも興味が?

大谷さん:お酒大好きですからね (笑) 。子どもの頃から飲食店をやってみたいなっていうのがあって。昔なんかは中卒でお蕎麦屋さんに丁稚奉公行くかなんて言ってくれたんだけど、うちの親父も家が農家で、中卒で働いて苦労してたから、社会に出て高校までは行きなさいって。高校に行ったものの道が間違っちゃっていろんなことやってたんだけど……。さなえさんと一緒になって、機会があってお店を開くことができました。

——飲食店に興味を持たれたのはどうしてですか?

大谷さん:小さい頃から料理って楽しいなって思うことがあって、おふくろの料理の姿とかも見てたし。お店のモツ煮も、親父が昔に行ってた消防で覚えてきたゴロゴロ野菜の入ったモツ煮を、家で食べてて、ちょっとアレンジして出すようになってね。

——モツ煮はどんな所にこだわりが?

大谷さん:普通のモツ煮って肉かすを使うことが多いんだけど、うちは白モツだけを使って作るからほんとに臭みも少なくて。俗に言う白コロってやつしか使ってないから、余計な部位が入ってなくて食べやすいんですよね。私が昔子供の頃に食べてたモツ煮はつゆがいっぱいのものだったんですよ。そうするとご飯のおかずになるでしょ? だからお店のモツ煮も野菜をでっかく切って、つゆもたっぷりで提供してるんですよね。

——そうだったんですね。白モツの美味しさももちろんだとは思いますが、やっぱり手間暇があるんですよね?

大谷さん:他所のお店さんで作るもつ煮は、3回4回ぐらい煮こぼして油抜きをして作ってることが多いと思うんだけど、うちは1回も煮こぼしをしないで、月一で1時間2時間アク抜きをして作ってますね。

——勉強不足ですいません……煮こぼしってなんですか?

大谷さん:鍋でお湯を沸かしたらそこにモツを入れるじゃないですか。そうすると一旦温度が下がるからまた沸騰するまで待って、沸騰して茹で上がったら全部一回ざるにモツを上げるんですよ。またお湯を張ってモツを入れて沸騰したらこぼしてっていうのを繰り返す。それで脂抜きとか臭み抜きっていうのをやるんだけど、うちのお店のモツ煮は、モツ煮って言うよりもモツと一緒に野菜を食べる料理って感じかな。大根とか人参も切りが大きくて食べ応えもあるし、モツ煮の味がすごい染み込むから美味しいんですよね。たとえうちのモツ煮はモツが入ってなくても食べられると思いますよ。

——夢だったことが叶った訳ですよね、やっぱり嬉しかったですか?

大谷さん:お店を開けた当初はまだトラック乗ってたので、一人の女性に手伝ってもらってさなえさんと二人でやってもらっていたから、週末だけ顔出してただけでした。去年の4月から本格的にお店に入って、やっと仕事って感じになってきたかな。トラック乗ってた時は夜中に乗ってたから、さなえさんが店閉めて帰ってきて、起こして見送ってくれてって感じで。仕事終わって帰ってきて、さなえさんが仕入れをしてるのを手伝ったり。お店を開けた当初はそういう感じでしたね。

——ようやく落ち着いてお店で働かれてる感じなんですね。

大谷さん:週末にお店に立ってる時は手伝ってるとお酒が飲みたくて飲みたくて (笑)。なんでみんな飲んでるのに自分は飲めないんだって (笑)。 ちょっと暇になってくると一杯飲んじゃおうかなって。でも、それが去年の4月、仕事になってからは飲みたいって思わなくなったね。仕事としてやれるようになったんだなって。

——やっぱり楽しいですか?

大谷さん:楽しいですよ。やっぱり忙しいと楽しいです。

——踏み込んだ質問ですが、奥様との馴れ初めを聞いてもいいですか?

大谷さん:さなえさんがお花屋さんをやってて、厚木の戸室にお店を出してたんですよ。そこで花を売ってて、私が仕事帰りに親父に仏壇の花買ってこいって言われて、たまたま買いにいったのがさなえさんのところで。普通仏花って言ったら菊ばっかりでしょ? さなえさんの造ってた花は結構明るい感じの仏花だったから。「よく仏花買ってきますね」なんて話から「親父に仏壇の花買ってこい」って言われてなんて話をしてて。馴れ初めはそんな感じかな。

——素敵ですね。そこからお店をお二人で切り盛りしてるんですよね。

大谷さん:さなえさんとお付き合いするようになって、口の嗜好とか味の好みが似てることが分かって。女性一人じゃいけないお店に連れてくようになったり、今まで食べてなかったものを食べるようになったりとか。口の嗜好が合ったってことかな。

特別な日に食べる料理ではなく食べ飽きない料理を。

——椅子にすごく懐かしさを感じます。

大谷さん:これ、居抜き物件だったから前の経営者の人が揃えたものなんだよね (笑) 。開店当初はそっちの座敷も全部テーブルだったんだけど、お子さん連れだとやっぱり座敷の方が嬉しいだろうから座敷にして。これからの時代はってことで喫煙室も作って。私的にはこの椅子には嫌々勉強してた思い出しかないんだけど (笑)。 でもやっぱり年配の方は喜んでくれるよね。

——お料理は家庭料理が中心なんですよね。

大谷さん:特別な日に食べるものじゃなくて食べ飽きない料理を。毎日でも食べられるじゃないけど食べ飽きしないような料理にしようって。無理して作るんじゃなくて、さなえさんのできるもんでやろうよって話をしててね。それでも定食なんかだと、開店した時よりメニューが増えてて、あれもできるねこれもできるねってやってるうちにどんどん増えちゃって。

——手間暇を考えると、価格がリーズナブルで驚きました。

大谷さん:いまちょうど値上げしようか考えてたところなんだけどな (笑) 。何でもかんでも高騰してて、油なんかもすごい値上がりしちゃったからさ。揚げ物なかったらうち営業できないし。色々考えてるんだけど、そんなこと言われちゃうと値上げできないよね (笑)。 そこはまあ、夫婦二人でやってるから給料払わなくていい訳じゃん。何とかおっつけおっつけでやってければ。

——お酒もたくさん置いてありますね。

大谷さん:うちは脂っこい料理が多いから、辛口ですっきりした種類のお酒を置いてますね。あぶら切れがよくなるでしょ。甘ったるい酒だと飲み飽きするしさって思って。美味しいお酒を美味しい料理で食べてもらえれば嬉しいですね。

——モツ煮以外のおすすめの料理を教えてください。

大谷さん:モツ煮以外だと唐揚げですね。唐揚げはけっこうボリュームがあって、ランチに来てくれるサラリーマンの方とかは、他の定食を頼むときは大盛りにするんだけど、唐揚げの時は破壊力あるから普通盛りでって。若い方だと唐揚げ定食が食べたいからご飯は半分にしてくれとか。どんぶり一杯で出してるからね。うちに来るのが初めての人は、出てきた唐揚げを見て後悔してることもあったり (笑)。

——唐揚げってもも肉のイメージがあるんですけど、胸肉なのはどうしてですか?

大谷さん:唐揚げはもも肉って言うのはまだ子どもだね (笑)。 固いんじゃないかぱさぱさするんじゃないかって思われてますけど、ちゃんと下処理すれば柔らかくて美味しく作れるんですよ。なにより胸肉は低カロリー高たんぱくだから。

——他のおすすめお料理は?

大谷さん:ここ最近は手羽先が人気ですね。シンプルなんだけど良い手羽を使ってるから、色々なところで食べてこられた方でも、うちの手羽を食べると「こんなに肉厚で肉肉しいのは食べたことない」って言ってもらえます。塩味なんだけど塩は一切使ってなくて、出汁で味付けをしてるんですよ。うちの料理って、あまり塩コショウとか醤油とか調味料を使わずに、牛だし鶏だし昆布だし、いろんな出汁で味付けをして下味がしっかりついてるんです。だから食べやすいんじゃないかな。後は野菜料理かな。野菜食べにくる人が多くて、うちの店は野菜が美味しいって言ってくれる人が結構いますね。週末に飯山のおじいさん方が農協出荷した地場野菜を仕入れているんですよ。春なんかだったら山菜がいっぱい出てたから、山菜の天ぷらをやったり。筍の天ぷらやったり、筍ご飯を作ったり。

——お野菜のお料理もたくさんあるんですね。

大谷さん:もうシーズンが終わったんだけど、白菜とツナのマスタードサラダが美味しかったですね。テレビで白菜農家さんが紹介してて、早速作ってみたんだけど中々美味しいですよ。白菜の甘みが際立ってね。ドサッと出したらすごい量だって言われるんだけど、みんなペロッと食べちゃいますね。次のシーズンだときゅうりとみょうがの浅漬けかな。あとは中華出汁で和えたキャベツのパリパリサラダとか。焼きナスなんかも出るね。しょうが醤油で味付けしてたんだけど、私なんかが食べる時はにんにく醤油なんですよ。だけどにんにく醤油だと抵抗ある人も多いでしょ、ニオイがなって。お店で出すのはしょうが醤油にしてるんだけど、にんにく醬油で食べると一番うまい。ナスを厚切りにしてさ、ナスステーキみたな感じでにんにく醬油もたっぷりかけて。

——季節にあったお料理を出されてるんですね。

大谷さん:基本メニューはあるんだけど、それ以外は季節によって変わりますね。その時期の旬のものを使った料理を出してます。自宅でも夏野菜を作ってるから、採れればそれも持って来たり、今も夏メニューを考えてます。

——自動販売機でお料理を販売されてるとお聞きしたんですが。

大谷さん:緊急事態宣言中でお客さん来ないし、待ってても来ないもんだからこっちから売りに行くしかないなって。12年乗ってる車を買い換えたいなーって思ってて見積り取ったんだけど、それがこっちのキッチンと自動販売機に消えちゃってさ。あーまだおれこの車乗らなきゃいけないんだって (笑)。営業さんもうまくてさ「大丈夫ですよ社長すぐ車買い換えられるようになりますから」って (笑)。愛川町の河原でキャンプやってる人が結構多くて、その人たちに買ってもらえたらいいなと思ってます。料理はカチカチの冷凍だから、クーラーボックスに入れておけば保冷剤の代わりになるし、キャンプなら湯銭のほうがいいなって思って、ほとんどが湯銭メインで作ってて。手羽先なんかは湯煎で戻した後に、網の上であぶってもらえばパリッとなるし、ひと手間加えるとさらにおいしくなるよって、SNSでどんどん発信していきたいなって思ってます。

——車が買えるぐらいになってほしいです、売れ行きが楽しみですね (笑)。最後にこれからの展望や目標があれば聞かせてください。

大谷さん:人一人ぐらいは雇えるようになりたいかな。二人でやってるから、込むと手が回らない時もあるし。堅実にね。

大谷さん、さなえさん、取材にご協力いただきありがとうございました。ご夫婦で切り盛りされている素敵な家庭料理屋さん。お肉やお野菜、お料理一つひとつのこだわりが伝わってきました。

 

さなえん家

住所:神奈川県厚木市愛甲1-10-14 ドエル201
TEL:046-258-9565
営業時間:ランチ 11:30~14:00(L.O.13:30) / ディナー 17:00~23:00
定休日:火曜日
ホームページ:https://www.sanaenchi.com/
Instagram:https://www.instagram.com/sanaenchi/
Twitter:https://twitter.com/sanaenchi
YouTube:https://www.youtube.com/watch?v=kAQ1LZ2zGFM
↑M.minamiさんのチャンネルで自動販売機のお料理が紹介されていました。

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